タンスイ派? チョースイ派? これを読んで今日からあなたもスイミング通

スイマーがごく当たり前に使っている「タンスイ」と「チョースイ」

実はスイミングと縁遠い人には聞きなれない言葉の一つ……あなたはこの言葉の意味と、実際の違いをご存知でしょうか?

言葉の意味の正解はこちら。

タンスイ=短水路(25mプール)
チョースイ=長水路(50mプール)

スイミングを本格的にはじめると、この言葉を日常的に使うようになります。しかし、なかにはこのようにツッコミたくなる人もいるのでは?

「プールが短いか長いかというだけの話でしょ?」

あなどることなかれ! たとえ泳ぐ距離が同じだったとしても、プールが長水路か短水路かによって、結果にはとんでもなく大きな差が生まれます。

この記事では、それぞれのスイミングプールの違いがもたらす記録への影響、心理的要因とレースを想定した短練習のポイント、試合会場で気をつけたいことについて解説していきます。

1.片道25mと50mの違いがもたらす記録への影響

ターン回数の違いによる影響

短水路と長水路を泳ぐ上でもっとも大きな違いは、ターンの回数です。例えば、泳ぐ距離の合計が100mだった場合、ターンの回数は以下のようになります。

  • 短水路でのターン回数:3回
  • 長水路でのターン回数:1回

スイミングの記録にターンが及ぼす影響は大きく、一般的には短水路の方がよい記録が出やすいとされています。

なぜならば、ターンをすることによって泳ぎの勢いを増すことができるからです。そのため、一般的な傾向としては短水路の方が好まれます。

しかしながら、ターンには高度な技術が必要なため、必ずしもプラス要因かというと、そうではありません。

かえってターンがロスを生じることもあり、苦手意識のある人はむしろ長水路を好む傾向にあります。

また、100mであれば回数といっても数えるほどのものでもありませんが、長距離になると泳いでいる途中で回数がわからなくなることも。

競泳競技でもっとも距離の長い種目は、1500m自由形です。これらの種目の短水路・長水路におけるターンの回数はそれぞれ何回でしょうか?

正解はこちら。

  • 短水路でのターン回数:59回
  • 長水路でのターン回数:29回

普段からイーブンペース(同じ速度)を保って泳ぐ習慣のある人は、ターンの回数が記録に及ぼす影響に、瞬時に気がついたのではないでしょうか?

例えば、1回のターンで0.1秒の差がつくとすれば、短水路で5.9秒、長水路で2.9秒もの差がひらくことになります。

実際はこのように単純なものではありませんが、競泳競技におけるターンとは、積もれば山となるとても重要な技術要素であることがわかりますね。

実際に泳ぐ距離の違いによる影響

新潟医療福祉大学水泳部は、潜水距離と泳ぐ距離の関係について、ブログを通じて興味深い内容を発信しています。

スタートと全てのターンで、15m潜水して進むことを想定し、潜水で進む距離と泳ぐ距離を計算すると、次のような結果になります。

100m】

  • 短水路:潜水  60m 泳ぐ距離  40m
  • 長水路:潜水  30m 泳ぐ距離  70m

【200m】

  • 短水路:潜水120m 泳ぐ距離  80m
  • 長水路:潜水  60m 泳ぐ距離140m

引用:長水路-新潟医療福祉大学水泳部通信

当該水泳部は、先日行われた『第95回日本選手権』へ出場選手を輩出しています。スイマーにとって何気ないシーンを客観視する力が、優秀な選手を輩出する力になっているのかもしれません。(*当メディア NATSUKI.Oライターの母校です)

そして、これらの情報からも、短水路と長水路のそれぞれに世界記録や日本記録が存在することに合点がいきます。

また、ターンは壁を力いっぱい蹴り出し、勢いよく進行方向へ発進するため、脚にかかる負荷は筋力の強い人ほど大きくなります。

そのため、世界レベルの選手の中には、短水路でのレースの方が長水路よりキツイと感じている選手もいるそうです。

第95回日本選手権水泳競技大会によせて

2019年4月11日

2.視覚がもたらす長水路の心理的要因と短水路での練習のポイント

長水路の心理的要因

初めて長水路のプールサイドに降り立つと、まずはプール面積の広さに圧倒されます。

長水路の横幅はおよそ20~25m。つまり、普段泳いでいるプールの長い辺が短い辺として目の前に現れるようなもの。

実際に泳ぐ方向は縦方向ですので横幅は関係ありませんが、向こう岸が遠いと感じた瞬間に委縮してしまいます。

また、水深が心理的影響を与える場合もあります。水深は、深いほど波の発生を抑える効果があるため、とても大事な環境要因です。

公益財団法人日本水泳連盟の「プール公認規則」によると、50m国際プールの水深は2.00m以上(推奨は3.00m)との定めがあります。

深いとその分、目で追うプールの底までの距離が長くなり、進み方が遅く感じます。

これらの心理的要因に影響されることなく泳げるようになるには慣れるほかなく、慣れるには長水路で練習するのが一番の方法です。

とはいうものの、長水路のスイミングプールは数が少ない上に、使用にはさまざまな条件や制限が設けられていることが多く、使い慣れた施設と比べると不便に感じることが多いのも事実。

そこで、使い慣れた短水路で長水路に適応するための練習のポイントを押さえていきましょう。

短水路での練習3つのポイント

  1. 終始フォームを崩さずに泳ぐ
  2. 後半のタイムを落とさずに泳ぐ
  3. 大きなストロークを意識して泳ぐ
  1. 終始フォームを崩さずに泳ぐ
    長水路では、ターンによる加速がないまま50mを泳ぎきるため、フォームが崩れがちです。したがって、普段から常にフォームを崩すことがないように意識して泳ぐ、というのが一つ目のポイントです。可能であれば、コーチや周囲の練習仲間にフォームの崩れをチェックしてもらってください。

  2. 後半のタイムを落とさずに泳ぐ
    インターバルのメニューでは、ラストの本数のタイムをできるだけ1本目のタイムから離さないように泳ぐ、という課題を課します。疲労の蓄積から失速が顕著に表れる長水路で、いかに後半の速度をキープするかという課題をもった練習は、十分な長水路の対策になります。その際は、特に脚(キック)が止まらないように気をつけましょう。

  3. 大きなストロークを意識して泳ぐ
    ストロークを大きくし、水をかく回数を減らすことができれば、その分エネルギーの消費を抑えることができます。また、ストローク中のリカバリー動作で力を抜くことができるようになれば、さらにエネルギーの消費を抑えることが可能です。

ご覧の通り、練習方法としてはどの方法も目新しいものではありません。また、長水路に限ってのことでもありません。

しかし、意識をして取り組まなければ、成しえない練習ばかりです。筆者自身、日頃からそのことを実感しています。

3.試合会場で気をつけたいこと

初めてレースに出場する際は、短水路・長水路のいずれかに関わらず、レース直前に右往左往せずにすむよう、経験者から情報を得て臨むことをおすすめします。

ここでは、試合会場で気をつけたいことについて、2点ご案内いたします。

  1. ウォーミングアップ
  2. スタート位置
  1. ウォーミングアップ
    アッププールはサブプールが解放されていることがほとんどですが、レース前に水の感触を確かめるために、開会前のメインプールで行うことをおすすめします。その際は、ウォーミングアップで使用できる時間に限りがありますので、一日のタイムスケジュールをよく確認しておきましょう。

  2. スタート位置
    長水路の50m種目ではターンがありません。そのため、スタートの位置が100m以上の種目と反対側になります。会場によっては招集所が2ヵ所に分かれることもありますので、招集時刻ギリギリに駆けつけて慌てることのないよう早めの行動を心掛けましょう。
『みんなの水泳手帳』MEMO

長水路のスイミングプールでは、2面の短水路へと仕様を変更して試合を行うことがあります。この場合、片道25mのA面およびB面の2面で競技を同時進行していきます。

試合当日に体調の不安を感じた際は、思い切って棄権をする決断が必要です。無理を押して出場し、事故となってしまうと元も子もありません。

そのような場面にいたらないようにするためにも、日頃の練習と体調管理が大切ですね。試合当日の雰囲気を知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。

とびおマスターズに参加してきました

2019年3月18日

4.まとめ

今回の記事では、それぞれのスイミングプールの違いがもたらす記録への影響、心理的要因とレースを想定した短練習のポイント、試合会場で気をつけたいことについて解説してきました。

国際基準の長水路プールは、ふだん泳いでいるスイミングクラブ・フィットネスクラブの短水路プールとは環境が大きく異なります。

機会を見つけて、お近くにある長水路プールでぜひ泳いでみてください。一度泳いでみるとレースに出場する際のイメージがわき、不安と緊張がやわらぐと思いますよ。

また、実際に長水路でのレースを経験することで、今をときめくトップスイマー、これまでに活躍してきた日本代表選手のすごさをあらためて感じることができると思います。

そうすると、これからの観戦も見方も変わりそうですね。これで、今日からあなたもスイミング通です!


~監修者からヒトコト~

NAOMI.S
NAOMI’S EYE(ロス五輪競泳元日本代表)
長水路のほうが本来の泳力が反映されやすく、短水路はターンと浮き上がりの占めるウエイトが大きいため、パワーゲーム感が濃くなる印象です。