子供がスイミングスクールで溺れる事故に遭わないために知っておきたいこと

水泳は水の中でおこなうスポーツなのでケガが少ないことはよく知られていますが、その一方でひとたび事故となると、陸上では起こりえないリスクがあることも事実。

陸の上ではちょっとしたケガで済むことも、水中では「溺れる」ことに直結してしまいます。まだプールの底に足がつかない小さな子供の場合は、とくに心配になってしまいますよね。

スイミングスクールでは、

  • かならずコーチの目が届くところに子供を配置して指導をする
  • 定期的に人数確認、体調確認をする
  • 泳力に応じてヘルパーなどの補助具をつける

などの対策を取り、常に子供の様子に気を配りながらレッスンをおこなっています。

しかし、どれだけ万全の体制をとっていても、水泳中の不慮の事故は年間数件、発生しています。どれだけ泳ぎがうまい人でも、水の中で運動をするかぎり、「溺れる」可能性は0ではありません

かといって、溺れるリスクを恐れるあまり、水に入ること自体を避けていては、子供が泳ぐことを楽しみ、泳ぎを習得するチャンスを奪ってしまうことにもなりかねません。大切なのは、「溺れる」ことを恐れるだけでなく、誰にでもそのリスクがあることを理解しておくこと。

また、水の中で運動するということを意識して、スイミング前後の体調管理もしっかりおこなう必要があります。

今回の記事では、子供がスイミングスクールで溺れる事故を未然に防ぐために、必要な情報をまとめてご紹介します。

1.スイミングスクールで溺れるのはどんなとき?

スイミングスクールで子供が溺れる事故は、水慣れクラスや少し泳げるようになったクラスで起こりやすいです。年齢としては、まだ背が小さく、プールの底に足がつかない、2~6歳くらいの幼児での発生が多いようです。

水慣れクラスでは、さまざまな動きを通して、水への恐怖心を取り除き、呼吸の仕方を練習します。水中に潜ったり、自由に動いたりできるようになれば、溺れる可能性は低くなりますが、水に慣れるにはまだまだ練習が必要です。

水慣れの段階では、全員が水の中に入って活動することが多いため、

  • プールフロア(水中の台)を使用して、足がつく水深でおこなう
  • 足がつかない場所で泳ぐときは、ヘルパーをつける
  • 活動スペースを狭くして死角を減らす
  • 複数のコーチが役割分担する

ことで、子供たちが安全にレッスンを受けられるようにします。

泳げるようになってくると、順番に入水して1~2人ずつ泳ぎ、コーチがしっかりと子供に目を配れるような体制を取ります。そのような体制をとっていても、子供は予想外の行動をすることがあります。隣のクラスが気になったり、ギャラリーにいるお母さんやお父さんに手を振ったりしているうちに、プールフロアが置かれていない深い場所に行ってしまっていることも。

まだ泳げない子供の場合は、足がつかないことでパニックになり、水を飲んでしまったり、呼吸がうまくできなくなってしまったりして溺れてしまいます。泳げるようになってからも、息継ぎのときに誤って水を飲んでしまい、むせたり呼吸ができなくなったりして、パニックになってしまう可能性も。

異変に気づいたコーチや監視員がすぐに助けるべきなのですが、コーチの目が届かない場所で溺れてしまったり、コーチがほかの子供に対応していて目を離しているすきに溺れてしまったりすると、発見に時間がかかってしまい、重大な事故につながってしまいます。

実は今回の記事を企画しているさなかに、以下のような事故が実際に発生しました。

3月16日に川崎店で4歳のお子様が黄色級のボビング練習のクラスで溺れる事故が発生致しました。
このクラスは9名のお子様が参加されており担当コーチは2名で運営しておりました。
また、プールサイドには監視員が2名常駐しておりました。お子様を発見後すぐに救命処置の上、病院に救急搬送致しました。現在、事故にあわれたお子様は治療中です。

引用:ティップネス・キッズ川崎店

上記の報告では水中での詳しい状況まではわかりませんが、コーチ、監視員が十分に配置されていたにもかかわらず、溺れてしまう事故が発生した、という事例です。
*3月22日時点において、スクール再開の目途が立っています

コーチの配置人数はスイミングスクールによって異なりますが、どれだけ体制を整えていても、溺れる事故が起こる可能性は0ではない、と考えておくべきです。

2.スイミングスクールで溺れてしまったら

万が一、子供が溺れるような事故が発生したとき、もちろん最優先すべきは子供の救命です。必要があれば救命処置や救急搬送をすみやかにおこないます。

溺れたとしても、すぐにコーチに助けられ、大事には至らないケースがほとんどだと思いますが、「溺れてしまった」という事実は親子共々ショックが大きいものです。子供がレッスン中に溺れてしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか? 

子供への対応

まずは、子供の顔色、せき込みや息苦しさなどがないかを確認します。元気そうに見えても、その日は体調に変化が出ていないか? 子供の体調に気をつけながら様子を見ましょう。

水を大量に飲んでしまった場合、吐いてしまうこともあります。せきが治まらないなど、気になる症状があれば、早めに病院で診察を受けましょう。

子供のメンタル面のケアも大切です。溺れたことをすぐに忘れてケロッとしている子もいますが、溺れたことがトラウマになってしまう子も。水に入ることへの恐怖心が出てしまって、プールに入るのを拒絶してしまうこともあります。子供の気持ちを受け止めて、無理強いせずに対応しましょう。

スイミングスクールへの対応

コーチがそばにいたにもかかわらず、子供が溺れてしまった場合、スクールやコーチに対して憤りを感じてしまうこともあるでしょう。まずはスイミングスクール側と、そのような事態が起こってしまった原因、監視員やコーチの配置、安全管理体制に問題はなかったのか、納得するまで話し合いましょう。

どのスイミングスクールも子供を安全に指導するための体制を取っていますが、危機管理に対する意識や方針はスクールによって異なるもの。

  • 誠意を持って対応してくれるか?
  • 実際にコーチの増員などが可能か?
  • その後も子供が安心して通うことができそうか?

安全面で改善が必要だと思われることはスクール側に要望を出し、納得できる答えが得られないのであれば、別のスクールへ移るという選択肢もあります。

子供が今後も安心して水泳を楽しむためには、安全な環境が必要不可欠です。

3.スイミングスクールで溺れないために

「溺れる」と聞くと、非常に怖いものと思われるかもしれません。しかし、水の中でアクシデントがあれば、誰でも溺れる可能性はあるのです。

だからこそ、どんな状況でも過信することなく、溺れる事故につながるような危険を事前に察知しておくことが大切です。

スイミングスクールで溺れる事故に遭わないために、知っておきたいポイントを以下にまとめてみました。

  1. 入水前の体調管理
    水中は陸上よりも体温が奪われやすいので、風邪気味のときや鼻水がひどいときにプールに入るのは避けましょう。
    体調が悪いまま泳ぐと、いつもどおりに呼吸ができず、パニックになって溺れてしまう可能性も。プールに入る前の子供の健康チェックは欠かさないようにしましょう。
    大人の場合も、溺水の事故は体調の変化によるものが多いです。少しでも体調が良くないなと思ったら、無理は絶対にしないようにしてください。
  2. 子供の危険意識を育てる
    楽しいことがたくさんあるスイミングですが、プールには危険なこともあると教えましょう。
    ぬれたプールサイドを走って滑って頭を打ったり、ふざけてプールに落ちたりしないように、決められたルールを守ることはとても大切。水を楽しむと同時に、危険なこともあると理解することで、溺れるような状況を避けられます。
  3. スイミングスクール選び
    どのスイミングスクールも、子供の命を預かり安全に指導するという体制を整えていますが、現実には、スクールやコーチ個人の危機管理に対する意識の差から、ヒューマンエラーが起こります。
    それでも、万が一溺れるという事態が発生したときに子供を救出できるのは、現場にいるコーチ、スタッフです。スイミングスクール選びの際には、以下の点に着目しましょう。
    ■1人のコーチが見る生徒数が多すぎないか?
    ■コーチは常に全員を見渡せる立ち位置を意識しているか?
    ■こまめに点呼をおこない、子供の顔色や表情にも気をつけているか?
    ■プールサイドに監視員はいるか?
    ■プールフロアやヘルパーの使い方は適切か?

筆者自身、小さいときに、潜ったあと思うように水面に出ることができず、パニックになったことがあります。

泳げるようになれば、鼻に水が入ったり、水を飲んでしまったりという水中でのアクシデントがあっても、パニックにならずに対処できます。

泳げるようになるということは、水の中で体の力を抜くことができる息継ぎができるようになる、ということ。筆者の場合、泳げるようになるにつれ、アクシデントが起こったときに落ち着いて対処できるようになっていきました。

まとめ

スイミングスクールで溺れるという事故に遭わないために、知っておくべきことをまとめました。

溺れると聞くと、どうしても怖いイメージを持ってしまいますが、「怖い」と思っているからこそ、危険な状況に気づき、回避できるのです。

1つの重大な事故が起こるには、29のちょっとした事故と300のヒヤリとするミスがあるとされています(ハインリッヒの法則より)。逆に考えると、ヒヤリとするミスを減らしていくことで、重大事故(水泳の場合は溺死)が起こる可能性を下げられます。ヒヤリとするようなことを「大丈夫だろう」と過信することなく、常に減らす努力をしていくことが、安全な指導につながります。

スイミングスクールのコーチはもちろん、通っている子供や親も、あらためて「溺れる」ことにつながる危険性を認識し、子供たちがスイミングを安全に楽しめるようにしていきたいですね。