発達障害のある子供にスイミングを始めさせる前に理解しておきたいこと

「ちゃんとレッスンを受けられるのかな?」

発達障害のある子供の場合、集団行動が苦手であったり、こだわりが強かったりといろいろな特性があるため、親としては不安に思ってしまいますよね。

この記事では、発達障害のある子にスイミングを始めさせる前に理解しておきたいことについて、詳しく解説していきます。

1.発達障害のある子供もスイミングを始められる?

発達障害のある子供にスイミングがよい理由

発達障害のある子供にとって、スイミングは比較的取り組みやすい運動です。

その理由は、以下の点にあります。

  • スイミングは基本的に個人プレーである
  • プールという常に同じ環境で運動できる
  • 浮力や水圧を活かして効果的に運動できる

プールは視覚的に、「どのレーンで、どこに向かって泳ぐのか」といった目的がわかりやすく、注意がいろいろなところに向いてしまいがちな子供でも、集中しやすい環境と言えます。

ただし、発達障害と一言でいっても特性はさまざまです。水が大好きな子供もいれば「感覚過敏」からプールが苦手という子供もいます。

また、集団行動が苦手だったり、指示が通りにくかったりすることも。まずは子供の特性をスイミングスクールに伝え、理解を得ることが大切です。

感覚過敏は、個々によって異なります。例えば、身体の特定部位に触れられることを著しく嫌がる、一般的には不快に感じられない特定の音を嫌がるなどです。感覚の過敏は、不安が強いとより多くのものにより強く反応しがちです。その一方で、感覚の過敏性は、子どもの不安や混乱をもたらす要因になり、その結果として、常同行動やかんしゃくなどが起こる場合があります。感覚過敏への指導として、できるだけ感覚過敏の要因となっている事物を特定し、なぜそれが要因となっているのかを把握することに努めましょう。そして、感覚過敏の原因になっている事物を可能な範囲で避けさせることから始めましょう。音への過敏性にはイア・マフの装着が有効なこともあります。構造化等によって見通しが可能となったり、コミュニケーションがよりよくできるようになったりすると、過敏の程度が軽減することが多いので基本的な対応として気をつけましょう。 

参考:感覚過敏に対する指導・支援-国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター

特別な配慮が必要な場合は、対応が可能かどうかもポイント。スイミングスクールの運営方針、コーチの理解度などによっては、子供に合わない場合もあります。

5つの感覚過敏

発達障害を持つ子供に多くみられる感覚過敏。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、これら5つの感覚のうち、いずれかの感覚もしくは複数の感覚が過敏になることをいいます。

プールに入るのを極端に嫌がる子供の場合、以下の理由が考えられます。

WARNING

  • 水面に光が反射してまぶしい(視覚)
  • コーチや子供の声が反響してうるさく感じる(聴覚)
  • 水の冷たさが不快(触覚)
  • 水が目に入ると痛い(触覚)
  • 塩素の匂いが不快(嗅覚)

過敏の度合いは人それぞれ。少しずつ慣れることができたり、年齢とともに過敏さが軽減したりすることが多いのですが、なかには「どうしてもイヤ!」と拒否してしまう子供も。

無理強いしてしまうと、水に入ること自体、トラウマになってしまうこともあります。無理をせず、一つずつできることを増やし、ステップアップしていきましょう。

どんな刺激が苦痛なのかがわかれば、具体的に対処することで、安心して取り組むことができるかもしれません。

スイミングを始める前の2つのステップ

スイミングを始めるにあたっては、次の2ステップを踏んで、子供の特性に合うスイミングスクールを見つけましょう。

  1. スイミングスクールに問い合わせる
  2. 体験レッスンを受ける
  1. スイミングスクールに問い合わせる
    発達障害のある子供の受け入れをしているかを確認します。スイミングスクールの運営方針、体制、コーチの理解度、経験値はさまざま。子供の特性を伝えた上で対応が可能なのかどうか、受け入れる側の意見を聞いてみましょう。

  2. 体験レッスンを受ける
    受け入れが可能であれば、実際のレッスンを体験してみましょう。レッスン内容やプールの雰囲気を知ることができ、子供とスクールの相性がある程度わかります。クラスあたりの子供の人数や担当するコーチの人数など、この機会に質問することもできます。

スイミングスクールによっては、発達障害や知的障害のある子供たちを対象としたクラスを設けているところもあります。

以前から障害のある子供たち向けの健康プログラムを行っているYMCAでは、下記のような指導方針を掲げています。

通常のクラスでは、まずは顔を水につけて浮かべるようになってから、バタ足、クロール、背泳ぎといった順序で指導していきますが、このクラスでは一般的な指導計画にとらわれず、個々の興味や特性に合わせて指導しています。たとえば顔を水につけるのが嫌いな子には、ビート板を使ってバタ足をやってみる、浮き具を使ってクロールの手だけをやってみるなど、無理のない方法で取り組んでいきます。いろいろなことをやってみる中で、興味が広がっていきます。

引用:障がいのある方の水泳・運動クラス-東京YMCA

通常クラスよりも少ない人数、もしくはマンツーマンで、発達障害児などの指導経験が豊富なコーチがレッスンを行います。

通常クラスではちょっと不安に思われる場合は、そのようなクラスを探してみてもいいですね。

『みんなの水泳手帳』MEMO

やらせたいからといって無理をしてやらせてしまうと、子供が楽しめなかったり、つらい思いをしてしまったりすることも。発達障害に対する理解が双方にあることが重要です。

2.スイミングが発達障害にもたらすメリットとは?

身体的メリット

水には、「浮力」「抵抗」「水圧」「水温」という4つの特性があり、それぞれに運動効果があります。

浮力
水中では浮力がはたらくため、足にかかる重力は地上の約1/10になります。筋力や体幹が弱く、陸上ではなかなか思いどおりに体を動かすことができない子供でも、思いきり全身を動かすことができ、筋力・体力の向上につながります。浮きながら左右のバランスを取ることを必要とされるので、体幹も鍛えられます。
抵抗
水には空気の約800倍もの抵抗があります。水中で腕や脚を動かすだけでも負荷がかかり、筋力アップにつながります。また、陸上では使わない筋肉を動かすことができます。
水圧
水圧が血液循環を促進し、肺にも圧力がかかるので心肺機能の向上につながります。陸上の運動では、すぐに疲れてしまう、苦手意識があるなど、続かないことの多い発達障害のある子供でも効果的な体力アップが見込めます。
水温
水中では陸上より27倍熱が奪われやすいため、 エネルギーの消費量がアップし、短い時間で高い運動効果が得られます。運動が苦手で集中力が続きにくい子供でも、効果的に運動することができます。

発達障害の子供の多くは、体幹が弱かったり運動が極度に苦手だったり、という特徴があります。水中では、浮力や水圧といった水の特性があるため、筋力の弱い子供でも効果的な全身運動が可能です。

精神的メリット

スイミングが発達障害にもたらすメリットは、精神面にも及びます。

ストレスの発散
体を思い切り動かすことで、ストレスの発散ができます。運動することによって爽快感や達成感が得られ、精神的な安定をもたらす効果も。浮力、水流といった水の感覚によっても、陸上での活動では味わえない癒し効果が得られます。
自己肯定感の向上
ゆっくりでも着実に自分のペースで上達していくことで、自信を持つことができます。日常生活ではうまくいかないことが多く、とりわけ運動面においては不器用であることが多いなかで、泳げるということは自信につながり、自己肯定感がアップします。
協調性の学習
基本的には個人プレーのスイミングですが、通常レッスンはグループで行われます。グループみんなで同じ動きをしたり、順番を待ったりすることで、協調性を身につけることができます。

発達障害には「発達性協調運動障害」といって、同時に複数の動きを行うことを苦手とする障害の種類があり、これらに該当する子供も多くみられます。

スイミングは手と足、呼吸など、別の動きを同時に行う必要があるため、協調運動のトレーニングになります。さまざまな筋肉を動かすことが「脳」に刺激を与え、発達を促します。

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3.スイミングスクール入会後に気をつけるべきこととは?

スイミングの練習前

実際にスイミングスクールに入会してからは、どのようなことに気をつければよいのでしょうか?

スイミングの練習前には必ず子供の体調を確認しましょう。

「幼稚園や学校での疲れが出ていないか?」
「体調を崩していないか?」

などの確認は、基本的なことですがとても大切。

発達障害の子供の多くは、体力がない、疲れやすい、ストレスを受けやすいなどの特性があり、本人が気づかないうちに疲れが溜まっていることがあります。

出典:TEENS 発達障害のある小中高生向け 放課後等デイサービス

水中での運動は見た目以上に体力を使います。トラブルを防ぐためにも、無理をせず、良い状態で楽しめるように、子供の様子をしっかり把握してあげましょう。

また、急に予定が変わるとパニックになりやすいタイプの子供の場合は、

「忘れ物がないか?」
「担当コーチの変更はないか?」

を確認して、変更があるときは不安にならないように、事前に説明しておくといいですよ。

スイミングの練習中

スイミングの練習中、保護者はギャラリー席で見学するのでプール室内の音はほとんど聞こえません。音が聞こえないぶん、子供ががんばっている様子をしっかりみてあげてください。

「コーチの話をちゃんと聞けているか?」
「集団行動ができているか?」

など、気になることがたくさんあるかもしれませんが、まずは子供ががんばっている姿を応援する気持ちで見守りましょう。

ただし、集団から外れ一人だけ違う行動をしていると、「溺れる事故」やケガにつながったり、場合によっては周囲の子を巻き込んでしまう危険性も。

問題行動が出ているときは、コーチに相談してみましょう。声かけの仕方や行動への配慮など、できる範囲で対応してくれることもあります。

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スイミングの練習後

スイミングの練習後は、レッスン中の子供のがんばりを具体的にほめてあげましょう。

「こんなことができるようになったね!」
「一生懸命にがんばる姿がかっこよかったよ。」

と、少しずつでもステップを積み重ねることによって自信がついてきます。そして、達成感を味わうことで、泳ぐことをどんどん楽しめるようになりますよ。

4.まとめ

今回の記事では、発達障害のある子にスイミングを始めさせる前に理解しておきたいことについて、詳しく解説いたしました。

子供にとっては泳ぐことで得られるメリットはもちろん、コーチや仲間との出会い、目標を達成したときの喜びなど、スイミングを通してさまざまな経験をすることができます。

スイミングスクール選び・コーチとの信頼関係づくりなど、子供の不安をできるだけ取り除いて、楽しくスイミングを続けていけるよう、環境を整えることでサポートしていきましょう。

ぜひ泳ぐことを楽しみながら、成長していって欲しいですね!


~監修者からヒトコト~

JUNICHI.K
JUNICHI’S EYE(パラリンピック3大会連続ゴールドメダリスト)
障害者差別解消法の趣旨から、障害者の受け入れはスイミングクラブの努力義務となっています。障害者およびその家族とスイミングクラブが、「ニュートラル」に「対等」に話ができるようになったらいいなと思っています。