早生まれはスイマーにとってお得? それとも損? [前編]

子供が選手コースにステップアップすると公認大会への参加機会が増えます。

そこでたびたび話題となるのが、「早生まれって得なの? それとも損なの?」というテーマ。

そもそも「早生まれ」とは何なのか?
スイマーにとって早生まれは有利なのか、不利なのか?

今回の記事では、ジュニアスイマーの保護者目線・水泳競技経験者の両目線から、早生まれと水泳に関する疑問についてまとめました。

前編では、早生まれと水泳との関係についての理解を深めていきたいと思います。

1.そもそも「早生まれ」とは

「早生まれ」の定義

「早生まれ」とは、1月1日から4月1日までの間に生まれた人のことを指します。ここで一つ、疑問が浮かびます。

「なぜ、きりのよい3月31日ではないのだろう?」

その答えは、学年を規定する学校教育法と年齢を規定する民法との関係にありました。

学校教育法 第22条1項 では、4月1日時点における満年齢が学年の基準になると定められていることから、早生まれの期間は4月1日までと決められたようです。

ここでのポイントは、「満年齢」を基準にしているという点にあります。満年齢では、年をとるのは生まれた日の前日の午後12時と定められています。

つまり、4月1日生まれの人は3月31日の午後12時に歳をとり、その結果、3月が誕生日の人と同じ学年=早生まれになります。

4月生まれの児童生徒の学年について

Q.「4月1日生まれの児童生徒の学年についてどうなるのでしょうか。」
A.「ー前述ー4月1日生まれの児童生徒の学年は、翌日の4月2日以降生まれの児童生徒の学年より一つ 上、ということになり、一学年は4月2日生まれから翌年の4月1日生まれの児童生徒までで構成されることになります。」

引用:「就学事務Q&A」文部科学省

「満年齢」と「数え年」の違い

筆者は3月生まれ、つまり、早生まれに該当するのですが、幼心にずっと疑問に感じていたことがありました。

「同じ学年の中では遅い時期に生まれているのに、なぜ生まれが早いと呼ばれるのだろう? むしろ遅生まれじゃないの?」

この謎は、日本古来の「数え年」に由来するものでした。数え年とは、生まれた年を1歳とし、新年を迎えたと同時に一つ年齢を重ねるという年齢の数え方です。

例えば、小学校入学のタイミングの年齢を数え年で見てみると、4月2日から12月31日生まれの人は8歳となり、翌年1月1日から4月2日生まれの人は7歳、つまり1歳若いということになります。

このように数え年で見ると、1歳若いのに上の学年に早く入学することから、早生まれと呼ばれるようになったそうです。

わかりやすくいうと、早生まれの早いというのは、出生日が早いのではなく、入学のタイミングが早いことを表していたのでした。

2.水泳競技における出場機会の分類

それでは、早生まれは水泳競技の出場機会にどう関係するのでしょうか? 

大会への出場機会を年齢と学年という切り口で分類することで、その関係性と影響の度合いが見えてきます。

  1. 年齢によって出場枠が区分されている大会
  2. 学年によって出場枠が区分されている大会
  3. 年齢・学年による出場枠の区分がない大会

➀年齢によって出場枠が区分されている大会

大会当日の満年齢を基準に出場枠を区分します。スイミングクラブから出場する大会の多くが該当します。

低年齢層の体格差による影響を少なくするため、1歳ごとに区分するなど、比較的細かく出場枠が区分されている傾向にあります。

年齢によって出場枠が区分されている大会の例
  • ジュニアオリンピックカップ
  • 地域公認記録会

②学年によって出場枠が区分されている大会

大会当日の学年を基準に出場枠を区分します。学校の部活動から出場する大会や、自治体をくくりとする大会などが該当します。

一般的には年を追うごとに体格差による影響は少なくなるものですが、成長期の体格差は依然大きいため、中・高では学年ごとに区分されることがほとんどです。

学年によって出場枠が区分されている大会の例
  • 県中学校総合体育大会
  • 国民体育大会

③年齢・学年による出場枠の区分がない大会

年齢や学年で出場枠を区分しません。すべての選手が同じ参加基準となり、全国大会や国際大会、またはそれらの予選会などが該当します。

このレベルになると、年齢や学年の違いそのものが意味を持たなくなります。

年齢・学年による出場枠の区分がない大会の例
  • 全日本選手権
  • オリンピック

本題とこれらの実情を照らし合わせて考えると、ジュニア期における大会の出場機会では、やはり早生まれは不利であると言えます。

3.ジュニア期の競技結果への影響

身体の成長が著しい時期は、年齢区分が競技結果に大きな影響を及ぼします。

身長の伸びや筋力・持久力の向上は、わずか数ケ月の期間に数秒~数十秒も記録を縮めることも珍しくありませんが、同じ記録であっても出場する年齢区分によって順位が大きく変わってきます。

JOをモデルとしたシミュレーション

昨年度(2018年)の夏季ジュニアオリンピックカップ水泳競技大会(以下JO)、女子100m背泳ぎ予選の結果をモデルに、シミュレーションをしてみましょう。

以下の表は、昨年度における実際の競技結果です。予選8位は、決勝進出を意味します。

年齢区分標準記録予選8位
11~12歳11歳 1:10.72
12歳 1:08.56
1:06.44
13~14歳13歳 1:06.68
14歳 1:05.43
1:05.32

*シミュレーションする選手の設定を、12歳中学校1年女子、ベストタイム1:06.99と仮定します。
*標準記録は、長水路であることを前提とします。

誕生日が大会翌日以降の場合
12歳枠での出場
JO決勝進出まであと0.56秒
誕生日が大会当日以前の場合
13歳枠での出場
JO決勝進出まであと1.68秒
JO予選出場まであと0.31秒

このシミュレーションにより、誕生日が数日違うことで「JOのファイナリスト」を狙える位置にいるのか、それ以前に「大会への出場すら危うい」のか、という差が生まれることがわかります。

また、JOのように年齢枠に2歳幅があると、3学年が混在することにもなります。

11~12歳枠の場合では、誕生日が大会以前の5年生及び6年生と、誕生日が大会翌日以降の中学1年生が同じレースに出場することになります。

5年生からすると2歳年上の選手との勝負、中学1年生からすると年下の小学生に混じっての勝負となります。

どちらの方がプレッシャーなのかは選手本人にしかわかりませんが、多少なりとも心理的な影響があると思われます。

「早生まれ」でも結果を残す選手の心理

さて、前項までの考察では、早生まれはジュニア期において不利と結論づけられそうですが、そのような定説をものともせず結果を残す選手がいることも、また事実です。

ここでは、誕生日や年齢にとらわれず結果を残す選手の内面について見ていきたいと思います。

  • ポジティブ思考タイプ
    結果を残すタイプの選手は、スバリ! 前向きで素直な思考タイプです。

    例えば、運悪く大会直前に誕生日が訪れてしまい、一つ上の年齢区分で出場することになったときに、このタイプの選手の思考はこのように働きます。

    「自分より年上の選手と並んで泳げるチャンス! 競り勝てばベストタイムが出せるかも!」

  • ネガティブ思考タイプ
    逆に、ネガティブ思考タイプの選手は次のように考えます。

    「自分より年上の選手と並んで泳ぐのは不利……負けて当然だから結果が悪くても仕方ない」

頭の中でどのように考えようとも、スタート台に立ったら待ったなしです。どちらの思考がより良いパフォーマンスを発揮できるかは、安に想像できるかと思います。

そして、これらの思考は癖であり、誕生月に起因するものでないことも確かです。

4.まとめ[前半]

前編では、早生まれと水泳との関係についての理解を深めてきました。早生まれを知るには、まず年齢の数え方を知る必要があります。

また、言葉の持つ印象と実際の使われ方に乖離(かいり)があることを理解すると、混乱している頭の中の交通整理ができると思います。

早生まれの選手は個人種目は元より所属するスイミングクラブ内でのリレーメンバーの選抜など、ある意味「逆境」とも呼べる条件をクリアしてきているとも言えます。そう考えると、早生まれでない選手も無関心ではいられませんね。

後編では、ポジティブ及びネガティブの思考の形成プロセスと、筆者の経験談を中心にお伝えしていきたいと思います。