脱スランプ!ジュニア選手もできるスイミング3つのルーティンと家族のサポート

「選手コースに上がったばかりの頃は泳ぐたびに伸びていたのに最近は記録が伸びず、練習もやる気が感じられない……」

選手生活が長かったり、トップレベルの選手だからこそというイメージがあるスランプですが、実は伸び盛りのジュニア選手でも陥ってしまうことがあります。

今回の記事では、ジュニア選手のスランプの正体や、実際にどのように乗り越えていけば良いのかについて、有名選手の逸話なども交えながら、その解決方法についてご紹介していきます。

1.スイミングのジュニア選手がスランプに陥る原因とは?

スイミングのジュニア選手がスランプに陥る原因には、以下のようなものが挙げられます。

  • スキル習得幅の狭小化
  • モチベーションの低下
  • 成長期特有の身体機能の低下

スキル習得幅の狭小化

泳法の基礎的なスキルを習得しているうちは泳力が目に見えてついてきますが、スキルが一定のレベルに達すると成長スピードは鈍化します。

これはスイミングに限らずスポーツ全般に置き換えてみても同じですね。これまで泳ぐたびに記録が伸びていたのに、突然伸び悩んでしまうのはこのためです。

解決方法としては、小さな課題を発見し、一つ一つクリアしていくことです。つまり、個別に有効な、新たなスキルを身につけることでスランプからの脱却が図れます。以下は、その一例です。

  • 力をより確実に水に伝達するスキル
    例)全種目共通:手のひらにつく泡を無くしながら水を掻く練習を行う

  • 一掻きでより多くの水をとらえるスキル
    例)背泳ぎ:指先の入水位置とプル動作の肘の軌道を修正する

  • 水の抵抗をより少なくするスキル
    例)平泳ぎ:キックのひきつけ角度と蹴りだし位置を修正する

  • 後半にバテないようにするスキル
    例)クロール:キック動作とプル動作のタイミングとテンポを調整する

このようにスイミングのスキルは、速さを追求する過程で細分化されていきます。スランプだと思うと、いまの泳ぎにたくさんの課題があるように感じるかもしれません。

しかし、すべての課題を一気に修正することは、泳ぎそのものを崩してしまうことにもなりかねません。いまの泳ぎの良さをいかしつつ、細かな課題をクリアしていくことがスランプからの脱却につながります。

モチベーションの低下

スランプと切り離せない原因に、モチベーションの低下があげられます。

学年が上がるにつれて練習以外の時間がいそがしくなったり、つきあう友達やストレスがきっかけで、競技のこと以外が楽しくなってきてしまう、という違ったベクトルに心が向くときがあります。

これらが原因でいったんスランプに陥ってしまうと、競技に対し意欲をもって取り組むことが難しくなります。このようなときには、客観的な目で競技に向き合うことが必要です。

そして、目の前の記録にこだわりすぎず、以下のように目線を変えてみましょう。また、目標を長期的に捉えることで、ベクトルが修正されるようになります。

  • 「毎回の練習でポイントを絞って鍛えよう。」
  • 「次の試合ではこのポイントを修正して泳げるようになろう。」
  • 「楽しみながら練習する工夫をしてみよう。」

反対に、周囲との比較は負のループにはまってしまうことに。スランプの時期や期間には個人差がありますので、周囲と比較しても意味がありません。昨日の自分より少しでも成長した点を見つけることが大切です。

成長期特有の身体機能の低下

10歳頃からはじまる「第二次性徴期」では、身体を上手くコントロールできなくなってしまうことがあります。

急激な身長の伸びとそれに伴う体重の増加に身体の感覚が追いつかず、その結果、泳ぎが急に崩れ抵抗が大きくなるなど、良い泳ぎの感覚がわからなくなりパフォーマンスが上がらないという現象が典型的なパターンとしてみられます。

パフォーマンスが上がらないと、その原因が何であるかを決めつけたくなりますが、根拠もなく結論づけることがないよう、以下を理解しておきましょう。

  • 選手本人の努力が足りないせいではない
  • コーチ・先生の指導が悪いせいではない

パフォーマンスに影響する期間は個人差が大きく、数週間~数ヶ月で感覚が戻る選手もいれば、数年かかる選手もいます。まずは、このような現象がある、ということを知ることが大切です。

2.スイミングのスランプを乗り越えるためのヒント

それでは、トップレベルの選手はどのようにしてスランプを乗り越えてきたのでしょうか?

「そもそもスランプと言っても、たいしたことはなかったのでは?」
「もともとすぐに乗り越えられるだけの力が備わっているのでは?」

もしかしたら、このように思われているかもしれません。しかし、トップレベルの選手であっても例外はありません。次に、国内では誰もが知る有名選手の事例に触れてみたいと思います。

有名選手に学ぶスランプと向き合う姿勢

北島康介選手の場合

かの有名な北島康介選手でさえスランプに陥った、という話はご存知でしょうか?

華々しい功績と名言にスポットライトが当てられがちですが、北島選手はアテネ五輪で金メダルを獲得したあとモチベーションを保てず、翌年の日本選手権で敗北した過去があります。入院するほどのケガや病気にも見舞われ、「北島はこのまま引退するだろう」と噂されたともいいます。

金藤理絵選手の場合

リオ五輪金メダリスト金藤理絵選手の、長きに渡るスランプはご存知でしょうか?

金藤選手は、2009年9月に日本記録を樹立したあと2016年1月まで、なんと6年もの間、記録が低迷しました。自己ベストから程遠いタイムしか出せない日々に、何度も心身ともに折れそうになったといいます。

これらの事例からわかることは、スランプは人を選ばないということ。有名選手であろうとジュニア選手であろうと、スランプは誰にでもやってきます。また、スランプに特効薬はありません。

しかし、スランプは乗り越えられるということもまた事実です。両選手は、記録が出ないことを他人や環境のせいにせず、自分の考え方やものごとの捉え方を変え、コーチと相談しながら目の前の課題に全力で向き合いながら競技を継続してきました。

その結果、北島選手は五輪史上初の2大会連続2冠という偉業を成し遂げ、金藤選手も女子200m平泳ぎで同種目としては24年ぶりとなる金メダルをつかみとりました。

そして、数々のスランプや逆境を乗り越えてきた両選手は、偉大な記録を残すとともに「日本中から愛される選手」になったのです。

周囲を味方につける力

ロンドン五輪での北島選手にまつわる逸話をもう一つご紹介します。

大会期間中、厳しい状況でのレースであったと思いますが、本当に苦しい場面で支えてくれる頼もしい仲間が、北島選手にはできていました。これまで幾度となく壁を乗り越え続けてきた力が、いつしか周囲の選手を味方につける力へと変わっていったのでした。

そして迎えた2012年8月4日、競泳競技最終日、最終種目、男子4×100mメドレーリレー決勝。

レース後の松田選手のインタビューは多くの感動を生み、同時に競泳競技のさらなる魅力を世に知らしめることになりました。「逆境に立ち向かう姿」と「信念」が、同じベクトルをもって闘う仲間の力をも引き出すことが証明された瞬間でもありました。

「3人で“康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかない”と話していました。」(松田丈志選手)

ロンドン五輪、日本競泳陣のエースである北島康介は100m、200m平泳ぎでともにメダルを逃してしまった。ひとつの時代の終焉を迎えた一抹の寂しさが漂ったが、そこで奮起したのが4×100mメドレーリレーのメンバーたちだった。松田の言葉にあるように、長年にわたって日本の水泳界をリードしてきた功労者に報うべく、入江陵介、藤井拓郎、松田がふだん以上の力を発揮し、そして北島も完ぺきな泳ぎを見せ、銀メダルという有終の美を飾ったのであった。

引用:Sports Graphic『NumberWeb

脱スランプ!3つのルーティン

筆者自身、15年以上の競泳生活で何度もスランプに陥りました。

そのたびに実行していたのが、以下の「スランプ時におこなう3つのルーティン」でした。このルーティンのおかげで、よどみがちな気分をリフレッシュして練習に取り組むことができました。

それが、こちらです。

  1. その日の練習を1本だけでも本気で泳ぎ、満足して終わること
  2. 練習中は正確なキックやプルを心がけ、スイム練習は良い泳ぎをキープすること
  3. あえて「スランプだ」と公言し、コーチや仲間とたくさん話をすること

筆者の場合、練習時の遅いタイムはさほど気にしないようにしていました。ただし、得意とするキック練習では、「25mで〇秒を狙おう」と目標を決め、そこだけは全力でがんばるのです。また、苦手なプル練習も投げ出さないことで泳技術も戻ってきました。

ルーティンですので、通常の練習メニューになくてもクールダウンの時間などを利用して必ずおこなっていました。集中して取り組むため、これだけはたいてい目標タイムをクリアすることができます。

そして、終えたあとにしっかりとクールダウンを行い、時間をかけてストレッチを行います。メリハリをつけた取り組みは、とても効果的でした。

ストレッチの効果とパフォーマンスとの関連については、こちらを参考にしてみてください。

スイミングのジュニア選手が知っておくべきストレッチの基本(再編)

2019年5月14日

また、あえて「最近伸び悩んでいる」と周囲に相談を持ちかけるようにしていました。コーチや仲間とたくさん話をすることで意外な解決方法が見つかったり、練習メニューに工夫をこらすことでスランプを乗り越えてきました。

最近では、勝ち色ゴーグルに変える手段がある、というお話を教えていただきました。視野を物理的に変えてみることで感覚がアップし、スランプから抜け出すきっかけになる場合があるとのこと。

そのほかにも、「自分ができることを一つずつ書き出し、全力で継続してみる」というのも有効な手段であるそうです。

スランプは一人で抱え込まず、周囲の力に頼ることが上手に乗り越えられるコツかもしれません。

3.ジュニア選手のスランプ時に家族ができること

スランプに陥ってしまったジュニア選手に対し、家族がサポートできることは、次の通りです。

  • 記録に一喜一憂しないこと
  • 練習や試合のできごとなどを楽しく話を聞いてあげること
  • ほかの選手と比較せず本人のがんばりを認めてあげること

長きにわたって競技を続けるためには、選手の成長を長い目で見ることが必要です。一時の記録に一気一憂してしまうと、成長の過程に目が向かなくなってしまいます。次々と立ちはだかるであろう試練に冷静に対処できるよう、家族もまた冷静に対処することが重要です。

スランプ時には、選手は過去の苦い経験から記録へのチャレンジに恐怖心を抱いていたり、自信を喪失していたりします。そのようなときに家族ができることは、「何をつらいと感じているか」、「どうなりたいと考えているのか」を、選手の目線に立ち一緒に考えること。

そして、「がんばりをちゃんと見てくれている」、「つらいときには相談に乗ってくれる」と心の支えになることが重要です。家族に苦しい状況を話すことで、選手自身の考えがまとまり解決へつながることもあるのです。

反対に、「練習が足りていない」、「もっと頑張れる」などの言葉は、発破をかけるつもりでも、「スランプの原因は自分の努力が足りないせい」と選手を追い込み、負のスパイラルを助長させる可能性があります。

選手がスランプに陥ったならば、まずはそばにいる家族が落ち着き、「よくあること」と認識します。そして苦しい胸の内を察し、その上で「あなたならできる」と伝えてあげてください。

スランプの時期はふだん以上に負荷がかかる時期ですが、乗り越えることができた暁には選手の大きな成長が見られることでしょう。家族にとってこれ以上嬉しいことはありません。

まとめ

スイミングは個人競技であるため、スランプに陥ったとしても基本的には自ら解決する力が求められます。はじめてのスランプでは戸惑うことも多く、スイミングが嫌になってしまうかもしれません。

だからといって、競技を変えても、別の何かをはじめるにしても、スランプがなくなることはありません。なぜならば、スランプは一定レベルに達したことの証だからです。苦しく感じるのは、レベルを上げるためにもがくから。

しかし、スランプは成長できる絶好のチャンスとも言えます。もしスランプと感じたならば、そこを乗り越えたときの姿を想像しながら無理のない程度にさまざまなことに挑戦してみてくださいね。その先には、スイミングが以前よりずっと好きでいる自分との出会いが待っているはずです。

 

HAJIME.I
HAJIME’S EYE(バルセロナ五輪競泳元日本代表)
後ろ向きな心での練習は、質を落としたり、ケガや事故につながる場合もあります。コーチや先生に相談しながら一つずつ壁を乗り越えたいですね。

ABOUTこの記事をかいた人

NATSUKI.O

競泳もOWSも、選手もマネージャーも、数多くの経験をしてきました。ビジネスでも全国レベルで闘いたい!マルチタスクライターです。