まさかの悪化!?スイミングで腰痛が治らない原因とその対処法

「腰痛の症状をやわらげたい。

このように、大人になってスイミングをはじめる動機の一つに「腰痛」があります。しかし、よかれと思って通いはじめたスイミングでも、まちがったケアをしながらのトレーニングでは腰痛の克服にいたりません。怖いのは、まちがったケアを正しいと思い込んだままトレーニングを続け、症状を悪化させること。

今回は、スイミングであなたの腰痛はなぜ治らないのか? トレーニング中、急に腰痛を発症したときに対処すべき方法は? など、いま以上に症状を悪化させないために知っておくべき「腰痛の基礎知識」をご紹介します。

1.スイミングで腰痛になる原因

スイミングや水中ウォーキングは、腰痛を緩和してくれるトレーニングの一種ですが、トレーニングの仕方しだいでは腰痛を悪化させてしまう場合があります。

本来、足腰への負担が少ないはずの水中運動でどうして腰痛が起こるのでしょうか? 考えうる原因とその症状について説明していきます。

プールならではの環境によるもの

スイミングプールの水温は30℃前後のため、運動強度が低いと身体は冷えることになります。腰痛で身体を冷やしてしまうことは、症状の悪化につながります。プールへ運動をしに行って身体を冷やしてしまうくらいならば、ジャグジーで温めるだけのほうが腰痛にはよいと言えます。

また、腰痛のなかでも特に「脊柱管狭窄症」にあてはまる場合は、身体を冷やしてさらに血流を悪くしないよう注意が必要です。

「脊柱管狭窄症」

この病気では長い距離を続けて歩くことができません。
もっとも特徴的な症状は、歩行と休息を繰り返す間歇性跛行(かんけつせいはこう)です。
腰部脊柱管狭窄症では腰痛はあまり強くなく、安静にしているときにはほとんど症状はありませんが、背筋を伸ばして立っていたり歩いたりすると、ふとももや膝から下にしびれや痛みが出て歩きづらくなります。
しかし、すこし前かがみになったり、腰かけたりするとしびれや痛みは軽減されます。
進行すると、下肢の力が落ちたり、肛門周囲のほてりや尿の出がわるくなったり、逆に尿が漏れることもあります。

公益社団法人日本整形外科学会HP 「脊柱管狭窄症」

スイミングならではの姿勢によるもの

背筋を緊張させたまま過度に腰椎を反り返らせた状態と、背骨まわりの筋肉の疲労が同時に起こることで「過伸展」が起こります。過伸展とは、必要以上に関節を伸ばしてしまう状態を指します。

スイミング上級者には定番のビート板を使ったキック練習。実はこの姿勢、体幹が弱いと胴体が沈んで過伸展を起こすことがあります。過伸展の状態が長く続くと、「腰椎分離症」を発症する可能性があります。

「腰椎分離症」

腰痛(腰のベルトのあたりの痛み)の場合と、お尻や太腿の痛みを出す場合があります。
痛みは腰椎を後ろにそらせた時に強くなります。
腰痛は10~15歳ころから生じますが、青少年から高齢者まで広い範囲にわたって腰痛や下肢痛・しびれが出ます。

公益社団法人日本整形外科学会HP 「腰椎分離症・分離すべり症」

スイミングならではの過負荷によるもの

スイミングにスタートとターンはかかせません。スタートとターンの動作では、水の抵抗にあがない力いっぱいプールの壁を蹴り出します。この際に、腰の筋肉がつっぱり大きな負荷がかかります。

腰痛にもっとも多い原因は、筋肉のつっぱりや炎症だそうです。痛みが強く急なものは「ぎっくり腰」と呼ばれ、歩けなくなるほどに。準備運動を怠り、急にトレーニングやエクササイズをはじめると起こることがあります。

「ぎっくり腰」

いわゆる「ぎっくり腰」は急に起こった強い腰の痛み(腰痛)を指す一般的に用いられている名称(通称)で、病名や診断名ではありません。
何か物を持ち上げようとしたとき、腰をねじるなどの動作をしたときなどに起こることが多いですが、朝起きた直後や何もしないで起こることもあります。
痛みの原因はさまざまで、腰の中の動く部分(関節)や軟骨(椎間板)に許容以上の力がかかってけがしたような状態(捻挫、椎間板損傷)、腰を支える筋肉やすじ(腱、靱帯)などの柔らかい組織(軟部組織)の損傷などが多いと考えられます。
しかし、下肢に痛みやしびれがあったり、力が入らないなどの症状があったりするときには椎間板ヘルニアや中年以上では腰部脊柱管狭窄症などの病気(疾患)の可能性もあります。
さらに、がんが転移して弱くなった背骨の骨折(病的骨折)や、ばい菌による背骨や軟骨(椎間板)の化膿など重大な原因が潜んでいることも時にあります。
通常ではない強い腰痛のときは整形外科を受診して正しい診断を受け、万が一にも重大な原因に対して手遅れにならないように注意する必要があります。

公益社団法人日本整形外科学会HP 「ぎっくり腰」

2.スイミングで腰痛は克服できるのか?

スイミングで腰痛になる原因がわかりました。それでは、トレーニングの動機であった腰痛の克服は、プールでできるのでしょうか?

答えは、YES!

その裏付けとして、スイミングクラブ・フィットネスクラブ各社では水中の特性をいかしたさまざまなプログラムが提供されています。

例えば、JSSスイミングスクールでは「楽しみながら腰痛・肩こりを緩和 “腰痛水泳コース”」を中・高齢者向けに提供しています。

同プログラムを開催している八王子校では、以下の内容でエクササイズをおこなっています。

腰痛・肩こり改善コース
  • 30分体操~ストレッチ体操で腰痛の痛み、肩こりを和らげます。
  • 45分水中運動~無理なく楽しみながら筋力をつけ腰痛・肩こりを予防します。

    (もちろん泳げなくても大丈夫です。)

また、コナミスポーツクラブでは、本年10月よりプールエクササイズをリニューアルし、プールで気軽に楽しめる目的別プログラムを提供予定。水に入るのがはじめてでも、水泳上級者でも楽しめるプログラムとなっているようです。

腰痛でもっとも多い原因の一つに「筋肉のつっぱり」があることを、前章で説明いたしました。この筋肉のつっぱりをとるのに水中でのエクササイズがとても有効です。浮力がはたらく水中だからこそ無理なく筋肉や筋を伸ばすことができ、筋力をつけることで腰痛を予防できるようになるのです。

みんなの水泳手帳MEMO
腰痛の上でプールでウォーキングをおこなうときは、後ろ歩きをすることをおすすめします。
腰への負担が少なくなり、足をすべらせることも少なくなります。

3.スイミングで腰痛になった際の対処法

気をつけながらも腰痛が起こってしまった際は、まずは安静にしてください。横になれる場所があれば、腰を曲げて横になると腰への負担が少なくなります。

発症時の正しい対処法

まちがった対処法により症状を悪化させないためには、正しい対処法を知っておくことが大切です。

  • 冷えによって生じた腰痛の場合
    “筋肉の炎症=冷やすことが効果的”との先入観から、冷却スプレーなどで筋肉を冷やすことをしがちですが、冷えによって生じた腰痛の場合は温めることが効果的です。

  • ぎっくり腰を生じてしまった場合
    トレーニング・エクササイズ中に過度な負荷がかかり腰痛を生じてしまった場合は、患部が熱を持っていると考えられるため、冷やすことが効果的です。

ポイントは、筋肉が凝り固まっているのか、炎症を起こしているのかを判断すること。慢性的な腰痛や疲労性の腰痛は前者に該当し、急性の腰痛は後者に該当することが予想されます。

気をつけたいスイミング練習法

スイミングで腰痛にならないようにするためには、腰を反る姿勢に気をつけることが大切です。

  • ビート板を使用するキック練習
    ビート板を使用すると自然と腰が反ってしまうため、腰にかかる負荷が大きくなります。
    スイミングの目的が腰痛を和らげることであれば、控えたほうがよいといえます。

  • バタフライ、平泳ぎの練習
    バタフライと平泳ぎは上体を大きく反らすため、腰への負荷が大きい泳法といえます。
    腰への負荷を軽減しようとし腕に頼って泳ぐと、肩へ負荷がかかるので注意が必要です。

筆者は、バタフライをスタイルとしていたため「腰椎椎間板ヘルニア」を発症しました。その後、腰まわりの筋肉を鍛えたことで腰痛を克服し、現在はその影響をほとんど受けることなく泳げています。

「腰椎椎間板ヘルニア」

腰や臀部が痛み、下肢にしびれや痛みが放散したり、足に力が入りにくくなります。
背骨が横に曲がり(疼痛性側弯)、動きにくくなり、重いものをもったりすると痛みが強くなることがあります。

公益社団法人日本整形外科学会HP 「腰椎椎間板ヘルニア」

大人は更衣室で着替えをすませたら即座に入水することが多いため、予防策の一環として入水前後のストレッチを習慣づけましょう。ストレッチは筋肉を緩めるだけではなく、身体の歪みを防ぐ役割も果たします。

まとめ

スイミングで腰痛になる原因とその対処法についてご紹介してきました。腰痛は日本人のおよそ10人に1人が自覚症状を持っており、すでに国民病の一つになっています(*)。

腰痛がきっかけではじめたスイミングなのに、むしろ悪化してしまったとなると目もあてられません。当初の目的を果たすためにも、腰痛に関する正しい知識をもったうえでトレーニング・エクササイズをはじめてください。そして、スイミングを楽しみながら続けてくださいね。

(*厚生労働省HP「平成22年国民生活基礎調査の概況」

 

~監修者からヒトコト~

TOMOMICHI.S
TOMOMICHI’S EYE(二子治療院アクアマリン代表)
予防のストレッチには、股関節周りを緩める梨状筋のストレッチなども有効ですよ。梨状筋は坐骨神経に直に触れている筋肉なので、疲労→緊張で「坐骨神経痛」を起こす可能性があります。